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名古屋簡易裁判所 昭和56年(ろ)91号 判決

被告人 古室五百三

昭一七・六・一八生 電気工事業

主文

本件公訴を棄却する。

理由

本件公訴事実は、「被告人は昭和五五年七月一六日午前七時三六分ころ、愛知県公安委員会が道路標識によつて最高速度を五〇キロメートル毎時と定めた愛知県海部郡蟹江町大字西之森字大江下一四番地附近道路において右最高速度をこえる六三キロメートル毎時の速度で普通貨物自動車を運転したものである。」というのである。

ところで本件公訴提起の事実については、まず警察官は、道路交通法(以下単に法と略称する。)一二六条一項各号に該当する場合を除き、被告人に法一二六条一項本文による告知をなし(法一三〇条二号により告知をすることができなかつた場合を除く。)仮納付の期間経過後、愛知県警察本部長が法一三〇条二号に該当する場合を除き、法施行令四五条所定の反則金六、〇〇〇円を法一二八条一項所定の納付期間内に納付するよう通告し、右期間内に反則金の納付がなかつたときにはじめて公訴を提起することができるものであるところ、被告人の当公判廷における供述、交通事件原票及び郵便配達証明書によれば、被告人に対し、警察官が昭和五五年七月一六日反則行為の種別欄中車両等の種類を普通車とし、反則金相当額を八、〇〇〇円として告知し、その後愛知県警察本部長は、右告知金額について告知是正の措置をとることなく昭和五五年一一月一九日到達の書面をもつて納付すべき金額を八、〇〇〇円とし、納付期限を同年一一月二九日とする通告をしたが、被告人は、右反則金を右期限までに納付しなかつたことが認められる。

しかし右通告は決定の金額より多額を通告したものであつて、被告人に法定の反則金額を納付して公訴の提起を免れる機会を失わせたことになるから、その違法は重大かつ明白であり、したがつて右通告は無効と解するほかはない。

以上のとおりであるから、法一三〇条二号に該当しない本件において、適法な通告をなさずに公訴を提起したものであるから、右公訴提起の手続は法一三〇条の規定に違反し無効といわなければならない。

よつて刑事訴訟法三三八条四号により、本件公訴を棄却することとし、主文のとおり判決する。

(裁判官 古谷友次)

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